ユーロネクストESGサミット:海洋経済を持続可能な方向へ転換

July 6, 2021

海洋経済の持続的発展と海洋の保護は密接に関連しています。革新的ファイナンスは重要な役割を担っており、BNPパリバの生物多様性に対する最近の取り組みと合致し、持続可能な経済への移行をさらに加速させています。

ユーロネクスト ESGサミットが「グリーンエコノミー/ブルーエコノミーのファイナンス」をテーマに6月8~9日に開催され、グテーレス国連事務総長、各国の政府代表、中央銀行高官、財界首脳といったハイレベルのスピーカーが集いました。今回のサミットの焦点の一部は、銀行や資本市場がどのように資金を「ブルーエコノミー(海洋経済)」へ向かわせ、それを支える海洋生態系を保全するかでした。BNPパリバ 会長ジャン・ルミエールは金融イノベーションやグリーン/ブルー投資への障壁を主題とするパネルでスピーチを行いました。

 

保全vs経済成長-両者は両立しないのか?

世界の海を保護する必要性に異議を唱える声はほとんどありません。海は気温を調整し、天候を左右し、炭素の最大の貯蔵庫でもあります。地球温暖化に伴って従来よりも極端な気象事象(干ばつ、ハリケーン、洪水等)の発生が予想され、海岸近くに住む人々はすでに海面上昇に苦しんでいます。それでも海には1.5兆ドル相当の経済規模があり、3億5,000万の人々が海運業界や沿岸業界に雇用され、その範囲は漁業や水産養殖から観光・鉱業におよび、数百万人が生計のため海に依存しています。また、海は大量のエネルギーの源でもあり、歴史的に石油やガスからエネルギーを生み出してきましたが、現在は洋上風力発電からのエネルギーが増えています。

海は地球表面の70%を覆っており、その潜在力の多くはまだ活用されていません。海はさらに多くの食料を生産でき、多くの(再生可能)エネルギーを生み出すことができ、未来の雇用創出も可能です。OECDの推定では、ブルーエコノミーに1ドル投資するごとに5ドルの利益が生じます。ノルウェーの首相が今回のサミット期間中に「私たちは保全と生産のいずれか一方を選ぶ必要はありません」と指摘した通りです。しかし、どのようにすれば海洋経済を拡大させ、同時に海洋環境を保全できるのでしょう? その答えの一部は、国際協調、多額の投資、金融イノベーションです。

 

海洋:世界最大の生態系

 

透明性の確保と基準の共有

ルミエール会長は今回のスピーチでサステナブルファイナンスの最近の革新的事例としてグリーンボンド、ブルーボンド、サステナビリティ・リンク・ローン等を挙げました。その上で、こうした金融商品はまだ初期段階だとし、投資家が情報に基づいて比較・判断する際に必要とする透明性や情報開示の基準や手段も初期段階にあることを付け加えました。また、EUがサステナブルファイナンスのタクソノミー基準整備に取り組んでいることを称え、一部の基準乱立に警戒感を示し、次のように述べました。「私は米国やアジアの企業・投資家の参加を歓迎していますが、どのルールの下での参加なのでしょう? 欧州がタクソノミーで先行していることが国際基準の構築を助け、理解の上に成り立つ測定・対比可能な基準に導くこと、私たちの間でいたずらに標準・基準の策定競争が起きないことを願っています。」

 

グリーン/ブルーファイナンスの加速

ルミエール会長が次に指摘したのは、グリーン資産を購入し、リーダーシップ、規模、正当性を提供することで中央銀行が果たせる重要な役割でした。この役割はより広範な金融業界にとっては難しい課題です。各金融機関がグリーンファイナンスを加速し、自社の融資は適切な方向に向かっていると確信・証明するためにはさらに取り組みが必要です。ルミエール会長は「お客さまとの関係も変化することになるでしょう」とし、「私たちは金融機関としてリスクの評価方法を熟知し、その上でグリーンファイナンスやブルーファイナンスに取り組んでいます。こうした資金調達はお客さまが環境に配慮した事業活動を公に実践していることを意味し、金融機関はお客さまの歩みを前向きに評価しています」と付け加えました。

ルミエール会長は、持続可能な資産を求める需要の強さを踏まえ、スピーチの最後に資産価格の上昇リスクを挙げ、銀行・資産運用業界に慎重なアプローチを呼び掛け、「収益計上に汲々とせず、健全な資産の開発に正しい方法で取り組みましょう」と述べました。現在、ブルー資産の供給は需要を大幅に下回っており、ルミエール会長はこの不均衡を「手を抜くリスク、グリーンウォッシングのリスク」と指摘し、投資業界に一定の規律を求めています。「焦燥感は理解でき、私たちは迅速に行動する必要がありますが、一歩ずつ着実に行きましょう。私たちは連携するとともに革新・速度で競争する必要がありますが、手抜きはなりません。私たちはこの姿勢にこぞって貢献しなければなりません」

 

BNPパリバのブルーエコノミーに対する取り組み

SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」はBNPパリバの社会的責任(CSR)方針の指針であり、BNPパリバは海洋経済を対象とするサステナブルファイナンスの必要性をかねてより認識してきました。BNPパリバは海洋保全に対する姿勢を先頃表明するとともに、具体的な措置も講じています。以下はその一部です。

  • 船舶の環境保護的な改良に対する資金調達を2019~2025年に10億ユーロコミット。
  • 生物多様性や過剰搾取資源を保護する革新的プロジェクトを支援。一例は「サンゴ礁のためのグローバル基金(Global Fund for Coral Reefs)」の創設。
  • 海洋の画期的研究、気候変動への影響、経済に対する重要性の測定等をBNPパリバ財団を通じて支援。
  • 船舶向け融資ポートフォリオの気候変動目標適合性を開示する協定「ポセイドン原則」に2020年に署名。

 

※本記事は英語で発行された記事の抄訳となります。原文をご覧になる場合はこちらをクリックしてください。

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