荒井 大輔 – 車いすテニス

経歴

東京都出身・BNPパリバ所属。先天性脛骨欠損の障害を右足に持ち、2歳から義足での生活を送る。中学時代に義足で軟式テニスを始め、中学、高専の部活では部長を務める。

福祉機器メーカーの営業マン時代に車いすテニスに出会う。2017年からBNPパリバ所属として海外転戦を開始。スロバキアオープン・台北オープンでシングルス優勝など、2019年は計6つの大会でシングルス優勝を果たし世界ランキングが飛躍。2021年の東京パラリンピック代表に選出される。

その後も着実にランキングを上げ、2023年に初めてグランドスラム全豪オープンに出場し、続く全仏オープンにも初出場を果たす。世界ランキングはシングルス10位、ダブルス12位(2023年7月10日付)。

テニスに出会って人生が変わった。人とのつながりは自分の財産。

テニスを始めたきっかけは、中学生の時に友人に誘われて軟式テニス部に入部したことです。運動は好きでしたが、人前で義足を見せたり、歩き方を見られたりするのに抵抗がありました。他の健常者の部員に交じって練習に励み、コートで対戦相手と互角以上に渡り合うことで、周囲からも特別扱いされないようになりました。このように自分も周りの意識も大きく変わり、コートの上では皆平等であると実感しました。一歩前に踏み出せ、自信もつきます。それからは自分からいろんな人と出会い、話を聞き、つながりを築くことができました。それは最も大きな自分の財産です。人とのつながりを今も大切にしています。

BNPパリバとの出会いと進化。

2017年のBNPパリバとの出会いもそのひとつです。前職では九州エリアを担当する営業として現地に赴くことが多く、練習時間の確保ができないことで悩んでいました。2017年のオーストラリアでの大会で、リオパラリンピックの銀メダリストに敗北したことで当時の会社を辞める決意をし、さらなる高みを目指すにはどうしたら良いかを考えていた時にBNPパリバと出会いました。

入社後は会社のサポートも受けながら、テニスに時間も気持ちも集中することができるようになり、県外での練習や海外遠征にも赴けるようになりました。物理的にできることは増えた一方、海外で一勝もできず悔しい思いをすることもよくあり、自分の未熟さを痛感し、その後すぐできるだけたくさんの指導を受けられるよう環境整備をしました。2019年から現コーチである穂積 善行氏から指導を受けるようになり、それからランキングを飛躍的に上げ、ついに世界ランキング10位と、目標のひとつであったトップ10入りを果たすことができました(2023年7月現在)。

私はBNPパリバの「社員」でもあり、社員向けのイベントや会社の戦略についても共有されるタウンホールミーティングなどへも参加しています。年末の社内の「Year End Party」では証券コードの早押し企画などでも一緒に盛り上がりました。実はそうしたイベントや社員との関わりからも新たな気づきや学びが得られています。スポーツの中で活かすこともあり、振り返ってみると色々な出会いが、自分を人間としても一回りも二回りも大きく成長させてくれたと感じています。

技術面で、満足することはありません。世界のレジェンドである国枝慎吾選手ともよく練習し、「この人を倒せば、もう誰にも負けない」との気概で臨みますが、壁の厚さを感じます。常に試行錯誤しながら挑み、それが相手にうまく効いた時は、大きな自信につながります。得意なショットはバックハンド。その強みを伸ばして、さらに上を目指したい。今の目標のひとつは、パラリンピックでの優勝です。

いつまでもチャレンジを続けたい。そしてその先の夢を叶えたい。

スポーツの魅力は、言葉がなくてもコミュニケーションが取れること、そしてチャレンジ精神を高めてくれることだと思います。一歩を踏み出すため背中を押してくれる。人生を変えてくれる力を持っている。自分のプレーを通じて、それを多くの人に伝えること。それが夢です。

車いすスポーツの魅力も、もっと伝えていきたい。日本では障がい者スポーツのイメージがまだ強いのですが、ヨーロッパでは一般の人々が純粋にスポーツ観戦を楽しみに足を運びます。スポーツ選手として、人に見てもらえるのはすごく有難いことです。日本でももっと試合を楽しんでもらいたい。そのためにも競技レベルを上げ、見て楽しんでいただけるようなプレーを見せられるよう頑張りたいと思います。

経験を積んでいくにつれ、自身の成績目標に加え、次世代の選手へ自分の経験を伝え育てていくことにも使命を感じています。これは選手のセカンドキャリア、そしてテニスの振興と、多方面を見据え取り組みたいことのひとつです。2023年にアジア太平洋地域で初の「Team BNP Paribas Young Talents Japan with JTA」が日本で開始され、日本のアンバサダーを務めることになりました。世界と競う選手となるには、技術はもちろん、強い精神力も必要とされます。テニス界の未来を担う選手をフィジカル、メンタルの両軸でサポートし、世界に羽ばたいていく選手の育成に携われることにわくわくしています。

何事においてもチャレンジを続ける自分で在りたいです。努力すれば人はなりたい自分になれる。なんでもやれる。チャンスはあちこちにあります。それをしっかり掴めるよう準備をしていきたい。そのために、いろんなことに興味を持つようにしています。常にアンテナを張り巡らし、チャンスがきたときにすぐに掴めるよう、努力し続けていきます。

関連リンク

BNPパリバはEU圏、そして世界を代表する金融機関の一つです。