クリーンエネルギーとしての水素の可能性を探る

November 9, 2021

エネルギーキャリアとしての水素の位置づけが主流になってきました。低炭素水素ソリューション分野に支援を表明する政府や大手グローバル企業が増えています。BNPパリバは水素が秘める潜在力の高さに長く注目してきました。大規模開発には難しい課題があるとはいえ、関心を抱く投資家の数は増加しています。

 

インフォグラフィック:グリーン水素の製造と潜在的用途(JPG画像)
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水素:エネルギーの新たな「エルドラド(黄金郷)」?

水素は化学・石油業界では長く使われてきましたが、現在はエネルギーキャリアとして他の画期的な用途が検討されています。たとえば、特定の産業分野の脱炭素化、電力貯蔵の安定化、そして大量輸送業界に対する電力供給です。

水素は時に「脱炭素化のスイス・アーミーナイフ」と呼ばれ、低炭素プロセスで製造されたものはカーボンニュートラルの実現に役立つ有望なソリューションです。最も関心を集めているのは、再生可能エネルギー源を使って生産されるグリーン水素です。

グリーン水素は他のエネルギーと比べてまだ割高なため充分に普及していませんが、特に低炭素電気とともに、再生可能エネルギーミックスで大きな役割を担うと予想され、世界的なCO2排出削減目標の達成に貢献すると期待されています。

 

「サステナブルな水素はBNPパリバのお客様のエネルギー転換でカギを握る要素となるでしょう。このため、BNPパリバの各事業がこの分野で積極的なアプローチを講じることが重要です。BNPパリバは既に進行しているプロジェクトや今後のプロジェクトの積み重ねを通じ、お客様や業界が歩む道筋をより的確に理解できるようになるとみています。グリーン水素を使用する地域エコシステムはまず融資を受け、その後、より大規模な水素エコシステムの発展を牽引していくことになるでしょう。」

ジャン=ローラン・ボナフェ、BNPパリバ最高経営責任者(CEO)

 

世界的な加速に向けて

米国からアジア、欧州まで、多数の国々が水素の開発を促す意欲的な政策を実行し、状況はめまぐるしく変化しています。政府・業界・企業のそれぞれが原動力になっています。

米国ではバイデン政権が水素を重視しています。その計画では水素製造を2倍あるいは4倍にさえする勢いで、製造コストを2分の1か3分の1に引き下げる意向です。中国は世界最大の水素ステーションを2021年7月に開設し、最新の5か年計画で水素を「未来の6産業」の1つに挙げています。また、日本でも政府が自動車メーカーやインフラ事業者と協力し、水素モビリティを数十年にわたって推進し続けています。

 

欧州の競争状況

欧州委員会は欧州グリーンディールの一環として水素に重点的に取り組む戦略を採用しています。ドイツが目下先頭を走り、欧州の水素の半分を製造しています。フランス、スペイン、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデンも大型プロジェクトを推進・計画中のため、程なく追い付く可能性があります。英国もブルー水素を工業規模で製造する意欲的計画を発表しており、特にCO2回収貯留インフラの開発に力を入れています。

水素に注力している国々は、この開発が多額の投資なしでは達成できないことを理解しており、水素の製造・貯蔵・流通には不可欠です。一方、関連コストの低減も必要です。貯蔵・流通インフラ開発には、いずれグリーン水素のおもな消費者になるであろうモビリティ業界と連携する必要があります。

 

 

BNPパリバ、水素への転換の取り組み

BNPパリバは世界を代表する金融機関としての役割を活かし、エネルギー業界に変化をもたらしてきました。専門家組織「低炭素移行グループ」を社内で発足し、グループ全体で培った専門知識を統合し、各国政府や企業とスキルを共有しています。

BNPパリバの「低炭素移行グループ」の目的は、お客様のエネルギー転換方針に助言を提供し、融資や金融商品を通じ、その実行を支援することです。債券発行、新規株式公開(IPO)、プロジェクトファイナンス、特定の環境基準の充足を条件とする起債や融資、投資信託など多岐にわたります。

またBNPパリバは職能上の枠を超えたグローバルな「Hydrogen Squad」も30人体制で立ち上げ、特に有望な水素ソリューション開発に融資や援助を行っています。この目的も同様で、サステナブルファイナンスを用い、専門ファンドの組成により、水素事業の発展を支援することです。このように、BNPパリバは水素という新市場で専門知識の蓄積を進め、長期的発展の促進に向けて金融ツールを編み出しています。

 

水素の製造方法による色分け:グレー、イエロー、ブルー、グリーン

水素はエネルギーキャリアで、エネルギー自体ではありません。水素は天然資源から化学反応で製造されています。

  • 「グレー水素」は化石燃料由来の水素で、現在も生産の95%を占めています
  • 「ブルー水素」はグレー水素と同様の方法で製造されますが、製造過程で排出されるCO2は回収され、再利用・貯蔵されており、低炭素と見なされています
  • 「イエロー水素」や「ピンク水素」は電気分解で製造され、原子力発電による電力のかなりの量を使用します
  • 「グリーン水素」は、再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力)起源電力を使用し、水の電気分解で製造されています

 

エネルギー転換:サステナブルファイナンスの主たる牽引役

BNPパリバは、英国のグリーン国債(グリーンギルト)発行の一翼を担いました。このグリーンギルトは英国がエネルギー転換資金を賄う一助として発行した過去最大の国債で、英国政府による水素業界支援に向けた初の戦略的プランのファイナンスのために設計されました。

また2021年5月、BNPパリバはAir Liquide社の初のグリーンボンド発行にも貢献しました。その調達資金は同社のサステナブル・ファイナンシング・フレームワーク内のグリーンプロジェクト開発に充当され、この中には水素の製造、貯蔵、流通、モビリティ用途が含まれています。

ガイアナでは、BNPパリバは同国市場初のプロジェクトファイナンスビークルを導入し、Meridiam、Hydrogène de France、La SARAのコンソーシアムによるCEOG Renewstable®プロジェクトの実現を可能にしました。このプロジェクトは世界初のマルチメガワット水素発電所の建設で、間欠的電力源のグリーンな水素貯蔵として最大規模となり、10,000世帯にグリーンエネルギーを供給することを目指しています。水素とソーラー技術を融合する世界初のプロジェクトであり、100%再生可能電力を生み出します。この先駆的プロジェクトは再生可能エネルギー開発のベンチマークになるとみられます。

資産運用については、BNPパリバ・アセットマネジメントの「BNP Paribas Energy Transition fund」を通じ、エネルギー転換に対する投資機会をお客様に提供しています。この投資機会は、エネルギー需要の増加、エネルギーミックスの変化、気候変動と闘うためのエネルギー効率に優れたソリューションに対するニーズの増大から生じています。もちろんこの中にはグリーン水素も含まれています。

 

「グリーン水素は低炭素電気との互換性が高く、したがって、特定のエネルギーや産業用途の脱炭素化で重要な役割を担うことが可能です。BNPパリバは適切なファイナンス手法を用い、影響力の大きい組織を全て水素バリューチェーンに組み入れる地域エコシステムの確立支援に積極的に取り組んでおり、私たちが共に目指しているカーボンニュートラルの目標達成に参画しています。」

Sébastien Soleille、エネルギー転換・環境グローバル責任者

 

水素:サステナブルモビリティの新たな原動力

BNPパリバは輸送業界で水素利用の拡大を促すため、Hyundai(現代自動車)とグローバル・パートナーシップを構築しました。この合意の一環として、Hyundaiに世界初クラスの水素モビリティファイナンスをスイスで提供しています。Hyundaiは水素電気トラック「エクシエント」を今後もスイスに輸出する見通しで、道路輸送の未来を具現化しています。

BNPパリバは輸送業界の支援にグループを挙げて関わっています。BNP Paribas Leasing SolutionsはHydrogen Refueling Solutionsとパートナーシップを構築し、その水素ステーションに融資を行っています。Hydrogen Refueling Solutionsは仏グルノーブル地域に拠点を置く企業で、大容量水素ステーションを小型車両(乗用車、タクシー、フォークリフト等)と大型車両(トラックやバス)向けに設計しています。また、Portzamparc(BNPパリバの子会社で、BNP Paribas Private Banking の株式市場スペシャリスト)は、Hydrogen Refueling Solutionsの2021年2月のIPOに支援を提供しています。Portzamparcは2021年後半、輸送業界の他のフランス企業2社(Hydrogène de France とEntech)のIPOも手掛けています。

BNPパリバではこうした事例が豊富で、これまでに開始・発表したプロジェクトは多岐にわたり、世界中の国々におよんでいます。水素革命は進んでいます。BNPパリバの目標は、グリーン水素の大規模開発でお客様を支援することです。

 

BNPパリバ:協議会のアクティブメンバー

BNPパリバは水素協議会(Hydrogen Council)のメンバーで、その投資家グループの創立メンバーです。水素協議会(2017年1月設立)には現在120社以上が参加し、水素業界の成長加速に向けて結集しています。新たに選出された役員会(board of directors)は13社の代表で構成されています(Air Liquide、Anglo America、China Energy、Cummins、Engie、Faurecia、Hyundai、Johnson Matthey、Shell、Sinopec、Linde、TotalEnergies、トヨタ自動車)。

 

 

※本記事は英語で発行された記事の抄訳となります。原文をご覧になる場合はこちらをクリックしてください。

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