河野 龍太郎 Weekly Economic Report
Photo by Kazutoshi Sumitomo
出版のお知らせ『成長の臨界 「飽和資本主義」はどこへ向かうのか』
慶應義塾大学出版会より、2022年7月15日に発売されました。ぜひご覧ください。
本書で扱うテーマを紹介した「はじめに」(PDF: 約0.6MB)をご覧いただけます。
第1章 第三次グローバリゼーションの光と影
第2章 分配の歪みがもたらす低成長と低金利
第3章 日本の長期停滞の真因
第4章 イノベーションと生産性のジレンマ
第5章 超低金利政策・再考
第6章 公的債務の政治経済学
第7章 「一強基軸通貨」ドル体制のゆらぎ ――国際通貨覇権の攻防
終 章 よりよき社会をめざして
詳細は こちら( 慶應義塾大学出版会のリンク:新しいウィンドウで開きます)
エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10(2022年)第9位
日本経済新聞
2022年 ベスト経済書 日本の活路の指針として支持を集めた書籍 第1位
週刊ダイヤモンド
2022年 ベスト経済書・経営書 第2位
週刊東洋経済
「成長の臨界」を考えるためのえりすぐりの書籍を紹介しています
最近のレポート
BNPパリバ証券 河野龍太郎: 日銀の政策修正のシークエンスを探る -YCC撤廃、マイナス金利撤廃、テーパリング開始のどれが先か-
No.1023 (2023年9月13日)
ここに来て、日銀から、早期の政策修正もあり得るとのシグナルが発せられ始めたのは、7月末の政策修正後も円安が進行した為替市場への牽制という意味合いも大きかったと見られる。引き続き、筆者の現在の基本シナリオは、日銀は、春闘の結果を確認し、来年4月会合の際、展望レポートでその分析や新たな物価見通しを提示した上で、政策修正に踏み切るというものである。ただ、今年末から来年始にかけて、日銀は、支店網を通じて、来春の賃上げについて企業へのヒアリングなどを積み上げていくと見られる。こうしたヒアリングや、今年後半の物価動向および経済情勢から、春を待たずして、次年度の賃上げの大まかな姿を予測することは確かに可能であろう。今回、総裁自らが早期の政策修正の可能性に言及したことも踏まえると、こうした牽制にも拘わらず、一段と円安が進行する場合、日銀が年内あるいは来年早々にも政策修正を前倒しする可能性は低くはないのかもしれない。
いずれにせよ、日銀が遠くない将来の2%インフレの安定的実現の達成を視野に入れ、今後の政策を考え始めているのは間違いないだろう。ただ、この先、どのような手順で政策を修正していくかについては、現在の日銀のフォワードガイダンスから分かることはあまり多くはない。今回のWeekly Economic Reportでは、複雑怪奇な政策修正のシークエンスを探る。
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BNPパリバ証券 河野龍太郎: グローバル・バリューチェーンの支配権を誰が握るのか? -「安全保障のジレンマ」に陥った米中-
No.1022 (2023年9月7日)
しばらく長編のWeekly Economic Reportばかり書いていたので、今週はお休みをいただき、グローバル・バリューチェーンに関するお薦めの一冊をご紹介します。
米財務長官のジャネット・イエレンは、友好国での生産拠点の分散を意味する「フレンド・ショアリング」を提唱しています。米国外であっても、米国のコンテンツを含む財・サービスについては、中国企業との取引は容認しない、或いは、サプライチェーンからの中国の切り離しを求める、というのが米国の意向だと思われます。しかし、米国ルールを広範囲なセクターに厳格に域外適用しようとすると、グローバル企業にとっては、むしろ米国のコンテンツが含まれること事態がグローバル・サプライチェーン上の大きなリスクとなりかねません。つまり、米国離れが生じる恐れがあります。
結局、規制対象を絞り込んで厳重に管理するという「スモールヤード・ハイフェンス」戦略が取られ、デカップリング(分断)ではなく、欧州委員会代表のウルズラ・フォン・デア・ライエンが提唱するディリスキング(リスクの低減)に落ち着くということでしょうか。以下は、2023年9月2日号の週刊東洋経済への寄稿を修正・加筆したものです。
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BNPパリバ証券 河野龍太郎: グリードフレーションの意外な真実 -強欲は「強欲インフレ」をもたらさず-
No.1021 (2023年9月1日)
これまで、筆者は、財政インフレや構造インフレ論を含め、グローバルインフレーションに関する米欧の有力な研究を紹介してきた。今回、紹介するのは、欧米で社会的に大きな注目を集める「グリードフレーション(強欲インフレ)」 に関する論考である。拙著『成長の臨界(慶応義塾大学出版会)』で詳しく論じた通り、2000年代以降の労働分配率の低下トレンドには、ITデジタル技術を駆使した大企業の価格支配力が高まったことが背景にあった。それは、ITデジタル企業だけに留まらない。非ITデジタル企業でも観察されたことであり、反トラスト法の緩和など1980年代の競争政策の緩和と1990年代後半以降のITデジタル革命が大きく影響していると考えられる。ただ、それは、あくまで価格水準の話であって、問題は、今回のグローバルインフレも大企業の価格支配力の上昇が大きく影響しているのか、ということである。EUが米国のプラットフォーマーなど独占企業の稼ぎ過ぎを問題視しているため、ECBもグリードフレーションに批判的だが、実態はどうだろう。
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